現在展開している『口述自伝制作』や『デジタル遺言自伝制作』の事業は、高齢者介護施設で「心理回想法」を進めてきたことがきっかけですね。
「心理回想法」とは、高齢の方々に過去の思い出を楽しく語ってもらうことで、認知機能の低下を予防したり改善する効果を得ることができる心理療法のことです。
つまり、脳に映像として記憶されている昔の出来事を言葉に変換して表現することで、前頭葉や海馬、視覚野や言語野など多岐にわたる脳の部位を連動して使うため、脳が活性化していくのです。
懐かしさを感じると、より多くの記憶を想起させることができます。回想で浮かび上がった懐かしい出来事を言語化し、語り合い、自伝や自分史に記述することで、より機能が動かされていきます。
この時、「生きがい感」を得る人が多いということを痛切に感じています。一般的に「生きがい』とは、他者との交流や社会参加活動に関連があるとされています。
同じ時代に生きた世代同士が語り合い、交流を深め、同じような体験や感情を共有したことが、「生きがい感」に大きな影響を与えます。
その意味で「グループ回想法」はとても良い方法なのですよ。
さらに、大切な思い出が一冊の本に詰められた自伝や自分史によって、自身の考えや思い、価値観というものが再発見でき、これが『生きがい』の大きな要因になるのです。
私は今も、心理回想療法研究者として、介護施設において「心理回想法」を行い、口述自伝制作のための傾聴力や質問力を磨き上げています。さらに聞き書き技術を向上させ、ノウハウの蓄積を進めています。
次回、高齢の方々にとって心が豊かになる自伝の制作や、心理回想法の現状と未来について、何回かに分けて詳しく書き記していきますね。
ー続くー