かつて藤本義一さんという作家がいました。2012年に亡くなられたので、もう9年の歳月が経つんですね。私たちにとっては11PMというテレビ番組で馴染みが深い方で、関西が生んだ名作家のひとりでしょう。
藤本さんは生前、〈自分史教室〉という講座を開いて、自伝や自分史を書きたいと思っている人たちにいろいろ教えていたようです。
藤本さんは、「自分が、もう一人の自分に向かって語りかけるのだから、素直に自分の考えや自分に対する批判も書けるのではないだろうか。文章を書くという気負いもなく、現在の自分の心境を綴ることが自分史への第一歩だ」と言っていました。
また、「文面には巧みに書こうとする背伸びなんかも必要ない。そうして改めて読んでみると、意外にぜい肉のついていない文章と接することに気づくだろう。無駄なもって回った表現などは微塵もいらない。これが文章の省略なのだ。絵で言えばデッサンといえるだろう。」とも言っています。
また、人間が自分の人生について考えるとき、大きく4つ視点があるのだと。それは「人生を“勝ち負け”で考えるか、“善悪”でみるか、“好き嫌い”で判断するか、一層のこと“損得”で測るのか。ひとりひとりにこれら4種のどれかが基準になって自分史は展開され、この4つの幹から枝や葉っぱが伸びている」と藤本さんは語り、
そして「自伝や自分史は、結局のところ、何を夢見て生きてきたかを記述するのものだ」と結んでいますね。