この前、京都に行ってきました。夏の初めに〈ライフヒストリー良知〉の業務を受注した会社のオーナーのAさんに会うためです。口述自伝はホームページ形式にして納品しましたが、とても喜んでおられましたね。今回ホームページに記載された内容について手直しがあり、掲載する写真を頂いたりその場で撮ったりして、今後の進め方について打ち合わせをしました。

長い人生経験の中から、昔のことを思い出すのはなかなかたいへんなことです。忘れ去っている事柄が多い。また思い出したとしても記憶違いというものがかなりあるのですが、もちろんその内容は偽りではありません。

だけど、遠い昔に見た風景の数々、出会った人たち、また語ったり聞いたりした言葉を正確に覚えているという人はほとんどいないでしょう。それが当たり前。大切なのは過去を振り返る、思い出すという行為や行動そのものなのです。

僕は、口述自伝の制作に向けた業務の中で、人の記憶をあいまいさを考えた時に、聴いた内容についてすぐ手直しができることを念頭に置く必要があると考えていました。僕と顧客とが双方向で対話し、聞き書きした後で記憶の違い、或いは解釈の違いに気づいたとき、直ちに校正や推敲ができるものにしないとだめですね。

これまで自伝や自分史を制作するとき、完成したものをすぐハードブックにして出版しようとします。だけどそれだと、後で記憶の間違いや思い出したことがあった場合、もう手遅れです。高額な費用をかけて本にするというのは大きなリスクが伴いますね。

ただ、活字にして豪華な表紙の重厚で素敵な本をその家の宝物にするというのは、顧客のみなさんの切実な願いのひとつですね。

現在、ホームページの中に〈私のライフヒストリー〉という項目を作り、顧客にインタビューした内容について、誕生・幼少時代・学生時代・青年時代・壮年時代・老年時代の6つに分けて、それぞれ時代の経験や出来事、そのとき思いや考えたことをわかりやすく平易な言葉にして、パスワードを入れると見られるようにしています。

また、時系列にその方の人生がわかるような個人年表のシステムも作りました。小学校の時楽しみながら書いた作文や日記、学生時代苦労して仕上げた卒論なども書き写しデジタル化して載せます。

さらに、学生時代の発表会やクラブ活動で賞を取った時にもらった賞状やトロフィー、壮・老年期に国や自治体、企業などから授けられた勲章や功労賞状なども写真を撮ってアップします。

そして最終的には、日本経済新聞の裏紙面にある『私の履歴書』のような、その方だけの〈人生の物語〉を書籍や電子ブックにして、家族や友人に読んでもらったり、まだ見ぬ子孫のために遺していくことを薦めています。

90歳になるAさんとそんなお話をしていたら、「かんさんに夢をもらっているなぁ」とAさんは笑いながら仰っていましたね。