前回に引き続き、〔話しことば〕と〔書きことば〕について書き記します。

〔話しことば〕には根本的な法則がある。当たり前のことだけど、絶対に言い直しがきかないということ。

〔書きことば〕なら、「あなたはバカだ」と書いてから、それを消して、「あなたは賢い」と書くことができるけれど、〔話しことば〕はそうはいかない。

とにかく、いったん口から出たら、それをどう取り消そうとしても無理ですね。相手に必ず伝わってしまう。これが〔話しことば〕の最大の特徴でしょう。

また、〔話しことば〕の世界では、文法はほとんど無視される。例えば、「痛い!足。あなたが踏んでいるのよ」これで十分伝わります。

混乱する場所にいればいるほど、緊張を強いられることがあればあるほど、急ぐのが多ければ多いほど、文法は無視されると思ったほうがいいでしょう。

日本語の会話は、往々にして主語が隠されている。というか主語を互いに共有していることが多い。だけど欧米諸国に行くと、主語から組み立て直さなければならないと言われますね。

例えば、一万円札が落ちていたとして、日本語では、「あっ、落ちてる」と言えば、主語がお札とかお金なんて言葉を使わなくても通じます。

ところが、これを英語やフランス語で言おうとすると、主語を頭のなかで探すという余分な行為が入りますね。

それと、日本語の句読法というものがしっかり確立していない。点と丸のルールがあいまいだというのは日本語の特徴のひとつ。

これは、基本的に〔書きことば〕の問題だけど、〔話しことば〕のほうへも影響を及ぼしている。英語などのコンマやピリオドに比べて、日本語のそれはほとんど気分で打っている。

因みに韓国語の場合、日本語と同じウラル・アルタイ語族に入るので、文法的にも日本語とひじょうによく似ている。「コンマやピリオドをどう打とうがかまわない。どうせ意味は通じるのだから」ということなのですよ。

次回も続けて、〔話しことば〕と〔書きことば〕についてお話しましょう