日本語の作文技術

本多勝一という有名なジャーナリストがいます。その昔、本多さんが朝日新聞の編集委員をしていたころから、本多さんが書いた本や記事をよく読んだものでした。

その中で、本多さんは〈日本語の作文技術〉という本を出版しています。初版が1983年だからもうかなり前のこと。〈ライフヒストリー良知〉の事業を進めていく上で、この本はたいへん参考になっていますよ。

「この本の目的はただひとつ、読む側にとってわかりやすい文章を書くこと、それだけだ。」

「だれにも学習可能な〈技術〉としての日本語作文を考えるに際して、よく誤解されている作文論があることを注意しておきたい。たとえば、〈話すように書けばよい〉という考え方がある。」

“誰だって話しているじゃないか。たいていの人は頭の中で作文にしてから口に出すのではない、いきなり話している。それならば書くのだって同じだ。話すように書けば書ける。〈作文〉ということで緊張し、固くなるから書けないのだ。”

「だが、この考え方はまったく誤っている。話すということと作文とでは、頭の中で使われる脳ミソの部分が別だというくらいに考えておく方がよい。文章は決して〈話すように書く〉わけにはいかないのだ。」と本多さんは言う。

1980年代は、脳科学が今のように発達していたわけではありません。今なら話すことと書くことは、その使われる脳の部位の違いは明らかになっているけれど、当時はあまりよくわかっていなかったはず。にも拘らず、本多さんはその本質を突いていましたね。

さらに、本多さんは、「〈見たとおりに書く〉という俗論がある。これなども〈話すように書く〉以上の暴論であろう」と言います。

まったくその通り。〈日本語の作文技術〉について、本多勝一さんから学ぶべき視点がたくさんありますよ。

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