今、「記憶」について、いろいろ学んだり、研究しています。その中から、何回かに分けて、箇条書きにして書き綴ってみますね。

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第1章 記憶は過去の記録でない

1.なぜ未来は過去に似るのか?

記憶というと、過去の振り返りに関係する心の機能であるかのように思われているが、そんな限定的なものではない。記憶というのは、私たちが生きるということ全般に係る心の機能なのだ。

また、記憶は、未来を見通す心の機能でもあり、現状をとっさに見抜く心の機能でもある。

2.記憶のスレ違い

得てして、自分の記憶と相手の記憶のスレ違いにとまどう。

3.記憶は過去の単なる記録ではない

記憶というと、過去の出来事や経験の単なる記録と思われがちですが、これは大きな勘違いだ。今日では、記憶は、オリジナルな出来事とは別に、記憶する人によって能動的につくられると言われる。

同じ経験をしても、同じ話を聞いても、思い出すことは人それぞれに違い、人によって視点が違う。。

4.視点に違いが記憶のスレ違いを生む

興味・関心の違い・利害の違い・立場の違い、そういったものが視点の違いをもたらし、記憶のスレ違いを生むのだ。

5.アウグスティヌスの卓見

神学者アウグスティヌスは、「未来は、まだここに存在しない。過去は、もうここには存在しない。ゆえに、未来や過去が存在するとしたら、『今ここ』の現在以外に考えられない。

つまり、未来とか過去とかいったものは存在しない。あるのは、過去についての現在、現在についての現在、そして未来についての現在である。そして過去についての現在が『記憶』である。

想起によって記憶が取り出されるとき、その出来事は、かつての心ではなく、現在の心で味わわれる。ゆえに、かつては悲しくて仕方なかった出来事も、自分を鍛えてくれた懐かしい出来事のように思い出されたりするのである」。

6.記憶は思い出すときにつくられる

現在の心理学では、記憶というのは、出来事が起こったときのままに引き出されるのではなく、思い出すときにつくり直されると考えられている。

7.記憶は思い出している今を映し出す

記憶が思い出すときにつくり直されるなら、思い出された内容は、今の心理状態や欲求や価値観を映し出しているのだ。

思い出したくないイヤな出来事や経験が含まれる時期についての記憶は、全般に薄れていく。その時期の何かを思い出すと、関連することが順々に思い出され、そうした連鎖の果てにイヤなことまで思い出してしまう。

「抑圧」という自分を守る心理メカニズムは、無意識のうちに発動される。

思春期を覆っていた黒い雲が払いのけられると、母親との口論も懐かしく思い出される。それと共に中学や高校での楽しいエピソードも、いろいろ蘇ってくる。今の心理状態が変われば、思い出されることも変わっていくのだ。

8.記憶のスレ違いが相手の心理や価値観を教えてくれる

フロイトはちょっとしたうっかりミスを「錯誤行為」と名付けた。そして「錯誤行為」にも隠された無意識的な意図が働いているとした。

無意識の抑圧が解けると記憶が蘇ってくる。

9.過去は変えられる

私たちが生きているのは「意味の世界」なのだ。ものや出来事そのものの世界ではなく、モノや出来事が持つ「意味の世界」。

意味と言うのは、経験する側が感じ取るもの、もっと大胆にいえば、経験する側が生み出すものなのだ。

自分の人生経験を重ねることによって、意味を感じる対象が違ってく。私たちの過去は心の中、「今ここ」にある。極めて主観的な場にあって、ここから示唆されることは、「過去は変えられる」ということなのだ。

重要なポイントは、記憶とは固定的なものではなく、ひとつの解釈であり、主観的な意味付けの産物であるということだ。

次回も記憶について、その概要をより深く、わかりやすく書き記しますね。

ー続くー