「成功をもたらす無限の力」の副題がある〈記憶力〉という本があります。これは、1862年にアメリカのメリーランドで生まれたジャーナリスト、ウィリアム・アトキンソンという人が書いたものです。

アトキンソンさんは、弁護士でしたが仕事の重圧から心身の病を併発し、経済的にも破たんした人でした。その後、精神医学や東洋思想などを学び、ビジネスや人間関係などについて幅広く執筆活動をしたその当時の著名人です。

亡くなったのは1932年、昭和の年号で言うと7年ですから今から84年前ですね。僕の母が生まれた年です。

脳科学も医学も今ほど発達していない遠い昔に、〈記憶力〉について実に丁寧に書いています。コンピューターやインターネットの中で育った現代人にとっても、学ぶべきところがたいへん多い。

私たちは人間の〈記憶力〉について、自ら過小評価をしているのではないか。年齢を重ねても訓練すれば〈記憶力〉は衰えるどころか、ますます強くなっていくことも可能ではないか。これを読んでみると、そう思いたくなります。

例えば、釈迦やキリスト、孔子などの聖人には弟子たちがたくさんいた。紙がなかった時代、ましてやレコーダとかスマホなど文明の利器がまったく存在しなかった時代、弟子たちは師匠である聖人の言葉を一言一句間違えることなく頭に刻んでいったという。そんな人たちがこれまでの歴史の中でごまんといた。その人たちのおかげで、その当時の思想や哲学が残され、その後多くの人たちの生き方に影響を与えっていったのですね。

この〈記憶力〉の話は、回を重ねて、この〈ライフヒストリー良知の世界〉で詳しく紹介していきたいと思います。

もちろん〈記憶力〉に関しては、当時のことと、近年脳科学の発達によって明らかになってきたこととの違いは大いにあるでしょう。それらを踏まえながら、まずは、アトキンソンが打ち出した〈記憶力〉について、

①記憶は顕在意識の奥にある潜在意識(無意識)の広大な領域に広がっているとともに、潜在意識の中に保管されている。

②記憶の中で完全に忘れ去られるものは何一つない。

③潜在意識に強く焼き付け、注意深く保管したことほど、顕在意識の領域に呼び戻しやすい。

となりますね。

〈記憶力〉、これからも広く深く探求していきます。

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