口述自伝制作〈ライフヒストリー良知〉ビジネスを展開する上で、これまで心理学と脳科学についていろいろ学んできました。
かといっても心理学にせよ、脳科学にせよ、たいへん専門性が高く極めて難解なところも多いため、「記憶」という分野に絞り込んだ中で知識と理論を得て、現在この事業を推し進めています。
「過去は変えられない」、そう思っている人が多いでしょう。しかし私たちは断言します、「過去は変えられる」と。
「そんなバカなことはない。タイムマシンに乗って過去をやり直すなんて夢物語だ。過去を変えるなんてできるわけがない」、そんな声が聞こえてきそうですね。
実際、「記憶というのは過去の記録だ」と信じ込んでいる人が大半です。かつて心理学の世界でも、〈記憶が過去の記録〉であるかのように取り扱われていたそうです。
しかし、そんな考え方を覆すような事例が数多く報告されるようになり、今では、〈記憶というのは過去の単なる記録〉ではなく、もっと能動的に〈過去を生み出す機能〉であると考えられているのです。
これまで、いろいろな心理実験により、思い出すときの心理状態によって思い出される内容が違ってくることがわかってきました。言い換えれば、記憶は思い出している人の心理状態を反映するものになっているのです。
実験協力者にある物語を聞かせた後、うち半分の人たちは楽しいことを思い出し、肯定的な気分に浸ってもらう。残りの半分の人たちには嫌な出来事を思い出し、否定的な気分に浸ってもらう。そして、先に聞いた物語を思い出してもらう。そうすると、同じ物語を聞いたのに、肯定的な気分の人は楽しい内容を数多く思い出し、否定的な気分の人は悲しい内容のことをたくさん思い出す傾向がみられた。
ここからわかるのは、私たちは今の気分に馴染む事柄を思い出しやすいということです。辛い思い出が多いからうつ状態になるのではなく、気分がうつ状態だから辛い思い出が引き出されるのです。
さらに言うと、楽しい気分や嬉しい気持ちに浸りつつ、過去を振り返ったり、身の回りの出来事に目を向けることで、幸せな記憶を作ることができるのです。
楽観的な人が成功しやすいということがいろんな調査によって証明されていますね。楽観的な人のほうが何事にも意欲的に取り組み、嫌なことがあっても落ち込みにくく、仕事や学校、家庭においても、気持ちが前向きになり成果を上げやすい。病気にもなりにくくなります。
では、楽観的な人と悲観的な人と比べると何がどう違うのか。
ひと言で言えば、「過去の解釈の仕方」が違うのです。
これから、何回かに分けて、こんな「記憶」についての話を書き記していきたいと思います。