この仕事をしていると、ときどき人から「過去を回想することなんて、現実に目をそらして逃避しているだけだ」と言われることがあります。

果たしてそうでしょうか?

現実とは、過去と現在と未来をまるごと抱えたものだと思っています。

未来に思いをはせて希望を持つことと、過去を振り返って思い出に身を委ねることと、どちらも大きな違いはないですね。人というのは、今日を生きるだけでなく、明日も生き、昨日も生きるのです。

歴史とは何でしょうか? 過去を確かめて未来への針路をさぐる、一見功利的にみえるけれどそうではないですね。私たちが歴史に惹かれるのは、そこに“懐かしさ”をおぼえるから。

歴史とはその事実に対して、私たちがどう解釈するか、人それぞれの解釈力によって「歴史の真実」が違ってきます。

懐かしさに身を任せることは、それぞれの個人にとっての疑いのない「真実の世界」なのです。

幼少期に遊んだ故郷の風景や小学校で楽しく歌った歌、青春時代に恋をしたことや友情を育んだんこと、それらがまざまざと蘇ってくる。それを後ろ向きというのは、どうなのでしょう。

人は郷愁の時間を真実に生きていると思っています。そのノスタルジーの深さに人生があると言っても、いい過ぎではないですね。

「どんな思い出でも自信もって楽しみましょう」。顧客にはいつもこう言っていますよ。