知恵と記憶
『年を取ると知恵がつく』というのは、洋の東西を問わず、これまでの長い歴史の中で言われてきた言葉ですね。〈知恵〉はきっと高齢者への贈り物に違いない。だけど年を取ると神経の働きが鈍っていくというのも確かなことですよね。
そもそも〈知恵〉とはなにか? 長い人生経験の中で培われた経験、失敗や成功を体験して得た知識、そのようなものを統合して〈知恵〉とよぶのでしょう。
僕は1日1回、必ず聖書の一節を読んでいるんだけれど、旧約聖書の中の有名な〈箴言〉(箴言とは“戒め”という意味)には、〈知恵〉という言葉が、これでもかと言うくらい数多く出てくる。
昔は、情報を得る方法があまりなくて、今はほんとうに多い。特に携帯電話やインターネットが普及していからは、情報を得ようと思えばいくらでも手に入ります。
そこに〈老人の知恵〉など、入る隙間がないように見える。高齢者への贈り物であったはずの〈知恵〉が、何も役に立たないように思える。でも、本当にそうでしょうか。
簡単に手に入る情報は、記憶として定着することなく、簡単に出ていきますね。だけど、高齢者が人生の艱難辛苦の中で経験し、脳に刻み込まれた知識は、そうやすやすと消え去るものではありません。そこに確固たる本物の情報があるから。
それを次世代に自信をもってしっかりと伝えていくことだろうと思いますね。
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