昨年の夏、京都の農業関連の老舗企業から、90歳になる取締役会長の口述自伝制作の依頼があり、何度か自宅にお伺いし、その方のライフヒストリーを聞き書きしました。

戦時中は旧制中学の学生で、終戦後、先祖代々の家業を継承するために入社、その頃からすでに海外に目を向け事業を拡大されていく。また業界団体のリーダーとしても尽力し、いかにも京都人らしい堅実かつ大胆な企業家として名を高め、次の世代にバトンタッチされる。

その方が先月亡くなられた。先日弔問に伺い、社長である息子さんとしばらく会長の思い出話に耽っていました。

僕が制作した会長の自伝は、ライフヒストリーホームページにして、聞き書きした内容について、誕生から幼少期、学生期、青年期、壮年期、老年期に分けて、出来るかぎりその方の口調や言い回しをそのまま残す聞き書き言葉で詳細に載せ、また小学校の時に書いた作文や学生時代の論文なども併せて掲載しています。

そこには、幼稚園や小学校に通っている時の写真、経営者として活躍している頃の写真、もちろん家族との団らんの写真などを数多くアップすると共に、勲章を受けた時の賞状や業界団体からの感謝状なども写真に収め掲載しています。

そして今回、会長の最期の言葉と共に、昨年、後世に伝える思いを熱く語って頂いたとき、録音した肉声をそこに遺すことにしました。

会長の人生そのものがこの中に集約されています。家族や友人たちがいつまでも忘れることなく、記憶のなかに留めていけるようにと。