今、世の中は〈自伝ブーム〉と言われています。
高齢化社会が到来し、今後もその数が飛躍的に増大するとなると、ブームにますます拍車がかかっていくでしょう。
自費出版の〈自伝〉を時々読むのですが、その中には〈波乱万丈の人生〉や〈山あり谷あり〉、〈切磋琢磨の日々〉といった表現がやたら多いのが目に付きます。
〈波乱万丈〉とか〈山や谷〉、〈切磋琢磨〉が飛び交う〈自伝〉は、初めは勢いがいいけれど、そのうちに書くことがなくなって霞んでいく、いわば「竜頭蛇尾」となってしまうケースが実に多い。これは、おそらく書き手の思い込みがとても激しく、自分だけに不幸や災難が降りかかってきたという心境で書いたからでしょうね。
確かに、〈自伝〉は、自分というものを中心に据えて書かれるべきものですが、自分中心にすべてが回転するという、謂わば天動説のように書いてしまうと読み手はうんざりします。
そうではなく、コペルニクスの地動説のように、自分はこの社会の一員として、太陽系の一惑星としての生き方を示すのだという思いで書くというのが、〈自伝〉の本質でしょう。
そのためには、私たちのようなライフヒストリアンが、顧客の〈波乱万丈の人生〉や〈山あり谷あり〉、〈切磋琢磨の日々〉といった話を聴いて、地動説のかたちにして書き著していくほうがより良き〈自伝〉ができると確信しています。
私は常々、人は〈自伝〉によって、「自分はこう生きてきた」というのではなく、「自分はなぜ生きてきたか」を証明することが必要だと思っています。
ライフヒストリアンは、顧客にその考え方をきちんと伝えることができます。口述による〈自伝〉を制作する意味のひとつは、まさしくここにあると言ってもいいですね。
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