認知症を抱える高齢者が増えるにつれ、〈記憶〉の重要性が以前よりも大きくクローズアップされていますね。私たちはこれまで〈記憶〉があることを前提に生活をしてきたけれど、実は歳を重ねていくにつれ〈記憶〉が減衰していくんだということを改めて知るにつけて、その恐怖や不安を覚えるようになっています。

脳の機能を測定する装置や機械が開発されて以来、〈記憶〉とは何か、そのメカニズムはどうなっているのか、などといったものがいろいろわかるようになってきました。

〈記憶〉の研究成果でコロンビア大学のエリック・カンデル博士はノーベル医学生理学賞してます。それほど、今は記憶に対する関心が増しているのです。

〈シナプス可塑性)という概念を打ち出したカルデルさんの理論は極めて難解ですが、近々このサイトで、わかりやすく解説したいと思います。

今日のようにレコーダーというものがなかった昔、人が語った言葉を残すのはそれを聞いた人の〈記憶〉だけが唯一の頼りでした。釈迦や孔子、キリストの弟子たちは、師匠が話した言葉を一言一句違えないように自分の脳の記憶装置の中に完璧に刻んでいたからこそ、今に生きる私たちは経典や論語、聖書を読むことができるのです。その意味で、人間の〈記憶力〉はすごい。

〈記憶〉を失いたくないと思うのは人として当然のことです。しかしながら、現実は加齢と共にそれを失っていきます。そのために今、〈記憶力〉を維持したり劣化を予防するための薬やトレーニング方法がさまざまな分野で研究されていますね。

私たちが推し進めているのは、その一環なのです。

「インタビューしてその方の生きてきた歴史を思い起こし、書き留め、後裔に遺していく」事業を通じて、〈記憶〉の減衰を可能な限り防止し、その方の〈記憶〉を失うことに対する恐怖や不安や少しでも取り除いていくことを、私たちの事業のビジョンのひとつに掲げているのです。

できる限り、これまで研究されてきた信頼すべき学者たちの文献や客観的なデータなどを引用し、また自らもその成果を蓄積して、ここでお話していきたいと考えています。