ライフヒストリアンによる『デジタル遺言自伝制作』事業とは、クライアントのライフヒストリーに耳を傾け、それをAI技術で文章化し、画像や音声と共に当社のデジタルシステムに乗せて、スマホやパソコンの画面で見聞きするというものです。

以前、私は京都の大学で教鞭を取る心理学の先生が主催する、カウンセラーの養成講座に半年間ほど通い、心理学とカウンセリングについての基本と実践を学びました。

その後、心理カウンセラーの民間資格を幾つか取得して、この〈ライフヒストリー良知〉の事業を進めています。

〈聞き書き〉というのは、文字通り、クライアントのこれまでの出来事や体験談、その時々の考えや思い、家族や友人、また未来の子孫に対して投げかける言葉などをしっかり聴いて書くということなのですが、そこにはある程度卓越した技術やノウハウが必要になりますね。

私は、クライアントである高齢者の方々からの話を聴くということは、「お客さまの記憶を甦らせる行為」だと確信しています。

高齢者は同じような話を繰り返しされる方が少なくない。それは、自分の過去に経験した中で、特に思い出深く記憶したものを回想しているからなのです。

これを専門的に〈記憶の島〉と呼んでいますが、具体的に説明します。

例えば、日本が沈没したとします。すると、富士山をはじめ3000m級の山の頂上だけが海面から突き出す。その突き出た山々は一見、島のように見える。これが高齢者の長い人生のなかの〈鮮明な記憶〉なのです。

従って、クライアントが昔を思い出そうとしたとき、その突起した島だけがはっきりと思い浮かぶのです。

本来〈記憶〉というものは生きている間ずっと続く、いわば大陸のようなもので、地続きであるはずなのですが、その全てをいつまでもはっきり覚えておくわけにはいきませんねよね。

年齢を重ねる毎に、必要ではないと思われるかなりの部分が、地続きでありながら海底に沈んでしまっています。これを〈忘却〉と言います。

いったん、脳に貯えられていた〈記憶の痕跡〉というものが、その後の検索がされないままに記憶装置の中に沈んでいる。

もちろん、その中には思い出したくないという意識が働いて忘却を誘導することもありますが。

語り手であるお客さまからいろいろ話を伺うなかで、その沈んでいる部分を聞き出すことによって、次第に島の数が増えて、やがてその島と島とが陸地になって繋がっていくことがよくあります。特に若いころの苦労話の中で、そういう場面に遭遇します。

そして、「思い出したくなかったから忘れていたことだけど、話しているうちに、何かすっきりしたな」と言うような言葉を発せられる方がほんと多い。

つまり、〈聞き書き〉というのは、聴くことを通して、水位を少しずつ下げていくことによって島の数を増やし、やがては日本列島そのものを浮かび上らせようとするものなのです。

ー続くー

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