先月末、『遺言書にデジタル自伝を添付し争族を防止する新たな事業モデル』の顧客開拓のためPR広告を打ち出したところ、たくさんの方々から資料請求がありました。
メールで資料を送る際、「なぜこの事業をやるのか」について以下のような説明文を添付しています。
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遺言書と自伝・自分史
相続と言えばセットで考えられるものとして遺言書があります。遺言書を遺すことで多くの相続問題は解決すると言われています。
特に公証人が作成する公正証書遺言は本人の意思であることを公に証明した遺言書で、この形式で遺すことを薦める専門家や士業の方々が多いかと思います。
法的に利害関係者に対し、何も言わせないという観点からはこの方法が正しいのですが、ここでは被相続人の本当の遺志や想いを正しく伝え、理解して頂くという観点から考えたいと思います。
遺言書に自伝や自分史を活用し、その有効性を更に高めるというお話をします。
1.遺言書に書くこと
遺言書に書くべき事柄として、
①相続に関すること
②財産の処分に関すること
③身分に関すること
の3つがあります。これを遺言事項と言います。
言い方を変えるとこの部分のみに法的な効力があり、その他のことが遺言書に書いてあった場合、それを実現しなくても法的には全く問題はありません。
そして『なぜ』という理由に関しては、たとえそれが財産のことであっても記載する必要がありません。
2.『なぜ』書いたのかが大事
ただ、必要がなくても『なぜ』という部分は誰でも知りたいことでしょう。そもそも『なぜ』遺言書を書いたのかという目的は、当然書いた方にはしっかりとあるはずです。
書く必要がなくても、この部分を明確に遺すことで遺言書がグッと信頼性の高いものになり、その人にしか遺すことの出来ない大切なメッセージとなります。
この話をする時、私は「北風と太陽」というイソップ童話をよく思い出します。法定な強制力は北風のように、いくら吹きつけても人間の心を吹き飛ばすように変えることは出来ません。かたや太陽のように人間が自ら行動に移せる方法もあるのです。
遺言書においては、上記の「遺言事項」に添える「付言事項」というものがあって、この部分に太陽のような役割があると思っています。
ここには何を書いても自由なのですが、「なぜ」ということについてや、お世話になった人への感謝の気持ち、家族や自分が大切にしてきたものへの思い、葬儀やお墓の希望など記載されることが多いですね。
3.「付言事項」に自伝や自分史を取り入れる
ただ、この「付言事項」はその言葉通り『おまけ』のような扱いだったり、書いた時点の気持ちを書いた瞬間的なものだったりします。
私は、「遺言事項」を誰に対しても納得させるためにはもう一工夫必要であると感じていました。また、『おまけ』だけを添えた遺言書が自分の人生最期に遺すべきものだとしたら、少し物足りなく、また寂しく感じないでしょうか?
私はこの「遺言事項」の根拠となりうるものとして、また自分が築いた財産を振り返り、どのような形で遺すべきなのかを生前にしっかり確認するためにも、「付言事項」に自伝や自分史を取り入れることをお勧めしています。
4.自伝や自分史は過去だけでなく未来も
自伝や自分史は過去のものだけではありません。未来の希望もそうなのです。自分の過去があっての未来への判断なのですから、遺言書に自伝や自分史が取り込まれるのは自然なことですね。
遺言書が財産を相続する人々の争い事やトラブルを防止するためだけの存在から、遺言書を遺した本人が主役であることを明確にするのが自伝や自分史を活用した遺言書であり、最終的には太陽のようにご家族の方々の心を動かすものとなるのです。
この考え方をもとに、私たちは「デジタル自伝システム」を開発しました。聞き書きの専門家である私たちライフヒストリアンが、被相続人の方から直接お話を聴いて文字に記し、昔撮った数多く懐かしい写真を挿入し、ご本人の肉声も入れて、遺言書の「付言事項」にURLを貼付、パスワードでしっかり制御しながら、スマホで見て聴いて頂くことができるようにしたのです。
5.付言事項(家族へ)
「私の人生の物語はこの遺言書に載せてある通り。詳しく書いているのでぜひ読んでほしい」
「辛く苦しいこともいろいろあったが、これまで頑張って来られたのはみんながいたおかげだ」
「子どもたちの成長がほんと楽しみで、心の励みとなったなぁ」
「私が亡くなっても、財産の取り合いなんかで絶対仲たがいしないでほしい」
「家族みんなの幸せをいつまでも願っているよ」
ライフヒストリー良知代表 姜永根