〔N1〕の〔N〕とは、対象の顧客数のことです。これが転じて〔N1分析〕の〔N1〕とは、たった一人の顧客にフォーカスして抽出したデータのことを指しますね。

では、〔N1分析〕のメリットとは何でしょうか?

一言でいうと、顧客の〔購買行動〕、私の事業で言うなら、〔自伝を書き遺す行動〕を左右している、根本的な理由を探れることにあります。

〔N1分析〕が、他のマーケティング手法と異なる最大の特徴は、一人の顧客の〔購買行動モデル〕、即ち「〔自伝を書き遺そうとする顧客の行動モデル〕として徹底的に掘り下げること」にあります。

従来のマーケティングリサーチ手法は、あくまで〔傾向値のみの把握〕であり、ともすると〔机上の空論〕になりがちでした。

しかし、〔N1分析〕であれば、実際に「製品やサービスに興味を持ったきっかけ」や、「立てた仮説が正しいか間違いか」を、一人の顧客とのインタビューを通じて直接確認することができます。

その結果、次のような課題が浮上してきました。

★そもそも、口述による自伝制作が事業として成り立つのか?

★成り立つとすれば、その表現媒体は書籍なのか、インターネットなのか?

★それがインターネットとするなら、〔ライフヒストリーホームページ〕は、どのようなシステムにして何を掲載するのが良いか?

★聞き書きにおいて、顧客に対し何を訊ね、どんな聴き方をすれば、顧客は気持ちよく話をしてくれるのか?

★顧客の語りを録音し、文字を起こした後、どんな文章で表現すれば、本人はもちろん、家族や友人などの読み手に楽しく読んでもらえるのか?

★これから生まれてくる顧客の子孫たちは、先祖の遺した自伝を見て読んで、何を思うのか?喜んでくれるだろうか?

★顧客の記憶を想起するための方法は何か?

★口述自伝を制作するプロセスで、顧客の脳の活性化に繋げていけるか? 介護や認知症の予防に寄与できるのか?

などの重要なヒントが得られ、その情報によって、顧客に対する説得力が発揮できるのです。

現在実践している不動産会社の経営者の方に対するライフヒストリーの制作は、この視点で進めています。

これまで受注してきた顧客のほぼ全てが、それぞれの業種は違っても、その企業の会長や社長というトップ経営者の方々で、謂わば、功成り名を遂げた人たちばかりでした。

ただ、今までは〔N1分析〕というマーケティング手法の発想がなく、業務を進める上でも、顧客のインサイト(自伝を書き遺そうとする心のうち)に深く入り込むことがありませんでした。

これからは、必ずしも大成功を収め、名声と富を得た人たちばかりでなく、日々実直に切磋琢磨しながら、家族や友人たちと苦楽を共にして〔人生の歴史と物語〕を作ってきた数多くの、いわば普通の人たちのライフヒストリーも、描けるようにしていこう。

昨年末に、我が社のPMF(プロダクト・マーケット・フィット:顧客が熱狂するサービス)となる〔デジタルによる口述自伝システム〕が完成したので、

〔N1分析〕によるマーケティング手法を検証しながら、「自伝が日本の文化的所産」になるよう。