漫画『課長島耕作』や『人間交差点』、『黄昏流星群』など、自身のサラリーマンの経歴を生かし、現代社会に生きる大人たちの様々な生活や生き様、葛藤などをテーマとした作品を描き、多くのヒット作品を生んだ弘兼(ひろかね)憲史という漫画家がいます。

私は、昔から弘兼憲史の漫画が大好きで、よく読みましたよ。

その彼が『死ぬまで上機嫌・その日までいつもニコニコ従わず』という題名の著書を上梓して、現在もこの本はベストセラーになっていますね。

この内容を簡単に言うと、
●死ぬ間際に後悔するのだけは、まっぴらごめんだ。
●人生は自分の考え方しだいであり、それは死を迎えるにあたっても同じ。
●苦労の多い人生だったとしても、「まあ、これでいいか」と思えばすべては万事解決。
●終わりよければすべてよし。
といったことです。

この本の中に、「『エンディングノート』のすすめ」というページがあります。私が今展開している『口述自伝制作〈ライフヒストリー良知〉事業』にたいへん関りの深い内容なので、それを書き記します。

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延命治療のことを含め、自分に何かあったときに備えて、家族に向けて書き残しておく。その方法となると『エンディングノート』は、すでに定着した感すらあります。文具メーカーなどがオリジナルの『エンディングノート』を発売しているので、その形式従って記入しておくと便利です。

(中略)

『エンディングノート』を作成して、家族にその事実を伝えておくと安心です。その内容を家族で確認し、話し合っておくとさらにいいですね。

『エンディングノート』は、自分の歩んできた人生を振り返るきっかけとしても注目されています。『自分史』の記録ツールでもあるわけです。

中には、『自分史』を作成するための年表や、時系列で印象に残った出来事を記入できるフォーマットが用意されているものもあります。そうしたスペースをひと通り埋めていくと、簡単な『自分史』が完成します。

『自分史』を書くというと、ちょっと尻込みしてしまいそうですが、大げさに考えなくても大丈夫。自分がこれまでの人生で経験してきた出来事を箇条書きにして、そのとき感じたこと、家族に伝えたい想いなどを簡単に書くだけで十分です。

ちょっとしたエピソードが、子どもや孫にとっては、まったく知らないあなたの一面だったりするものです。

文章力にある程度自信ある人は、本格的な『自伝』を書くのもいいでしょう。忠実に『自叙伝』を書き残すのもいいですし、自分の体験を題材にした『私小説』を書くのもいいですね。

『自伝』は資料的価値に重きを置くので、正確性を追求します。ときには、過去の出来事について当事者に電話をして確認するなど、新聞記者のように「裏を取る」作業が求められます。その過程で、しばらくぶりに現役時代の同僚と話したりするのも楽しい経験になるでしょう。

一方、『私小説』は多少事実を脚色し、自分を美化して書くのもOKです。例えば、学生時代に好きだった人と淡い恋愛関係に発展したと描写するとか、仕事で誰よりも成果をあげたなどと書いてしまっても構いません。

最近は、自費出版にかかる費用もずいぶん安くなってきたので、家族や親族用に50部くらい印刷しておくのもいい記念になります。

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こういった内容です。弘兼憲史の『自伝』や『自分史』、或いは『私小説』を書いて家族や知人、また後世に残そうという考えは、私たちライフヒストリアンの思いや目指すところとまったく同じですね。

さすが、弘兼憲史!