今年のお盆は、東京から長男家族が帰省しました。長男夫婦には小学校2年生と、幼稚園年長組のふたりの息子がいます。
彼らと一緒に食事をしながら、小学校や幼稚園での出来事を聴いたり、お墓参りをしたり、一緒にゲームをやったりと、楽しい時間を過ごしました。
ところで、江戸時代の末期、西郷隆盛と話し合って江戸城を無血で開城させ、江戸の町を戦禍から救ったのが徳川幕府の幕臣勝海舟ですね。
その海舟のお父さんは勝小吉という人なのですが、小吉は江戸弁丸出しの話し言葉をそのまま書き言葉にした〈夢酔独言〉という自伝を書いています。
これまでも何回か、このサイトで紹介しましたが、
小吉は喧嘩沙汰を繰り返したり、吉原に入り浸りになったり、物乞いのような生活をしたり、放蕩者で無頼漢。そんな小吉が、なぜ自伝を書こうと思ったのか。
小吉は、「孫やひ孫ができたら、おれみたいになるなよと言い聞かせ、戒めにするがいい。そのために自分がやったことをすべて書き遺しておくから」と海舟をはじめ身内の者に伝えたと言います。
「おれの血を幾らか受け継いでいるのだから、おれのようなとんでもない愚行をやりださないという保証はない。
おれはこんな生き方しかできなかったが、子孫にはまっとうに生きて欲しい」という小吉の願いが込められ、赤裸々に自分の体験を語り綴ったのでしょう。
これは凄く勇気のいることですよね。
私は、顧客となる高齢者の方々に、「自分の生き様を後世に伝えましょう」「子々孫々まであなたのライフヒストリーを遺しましょう」と話をしますが、
実際、子孫に伝え遺すという、いわば「家系の連続性」といったものに対してなかなか実感できず、理解してもらうことが難しい。
また、「自分の失敗や挫折した経験は衣を着せず、そのまま伝えるが大事ですよ」と言うと、一応理解はしてもらうものの、いざ文章にして遺すとなるとやはり躊躇される方がほとんどなのですね。
〈夢酔独言〉のような活き活きとした文章で、自分の生きざまを全てさらけ出している自伝は、あまり見当たりません。
「孫やひ孫ができたら、おれみたいになるなよ」というのも、自伝を遺すりっぱな動議付けになるのです。
私も、近い将来、自分の自伝を書こうと思っていますが、そのモデルはもちろん勝小吉なのです。
ー続くー