文章の書き方の教科書

文章の書き方を学ぶための教科書のような類の本がありますが、だいたい3種類くらいに分かれそうです。

まず〈文章読本〉。これは谷崎潤一郎、菊池寛、三島由紀夫、野間宏、丸谷才一、井上ひさしなど有名な小説家に支えられたもの多い。僕はこの中の野間、丸谷、井上の書いたものを熟読し、参考にしています。これらの本は、その作家独自の文章表現法とか文章観に支えらていて、読んでいて実に楽しい。

次は、〈文章作法〉の類。これは〈文章読本〉とは違い著者は学者が多いですね。例えば、清水幾太郎や樺島忠男など。

3つ目に、〈文章の作り方〉〈作文の技術〉などと題した本で、著者は作家、批評家、学者、ジャーナリスト、エッセイストなど多岐にわたります。これらのうち、僕は次の3人の著書を大いに活用しています。

元朝日新聞記者の本多勝一の〈日本語の作文技術〉はたいへん理解しやすく書かれており、また日本のトップクラスの国語学者で《文章の技》《名文》《美しい日本語》などの著者中村明の本は極めて論理的で、さらに外国人への日本語教育に向けた研究を行っている大学教授石黒圭の著書《文章表現の技術Ⅰ~Ⅴ》は、とても優れた技術書ですね。

日本語に関する書籍はほんと多い。これらの中から、〈ライフヒストリー良知〉の事業目的に合致した本を選び出し、僕が本当に求める幾つかの本に辿り着くまでの選択は、それほど単純ではない。

本を紐解き、手に取り、対話し、何回も繰り返していかないとなかなか自分のものにはできない。その本と自分の呼吸と合わすための時間が必要になります。

僕は、口述自伝を制作する際、顧客が語る言葉を聴いて文章化するとき、人をうならせるような名文や、誰にもまねのできない独創的な文章を書くことは、書きたい気持ちはあるけれど、できないですね。

大事なのは人に笑われない文章を書くこと。そう肝に命じています。しっかりと無難に仕上げるためには型どおりに書くことが大切なので、まず、その「型」を知らなければならない。そのための〈文章読本〉であり、〈文章表現技術〉の教科書なのです。

いずれにせよ、顧客が発した言葉を、正しくわかりやすい文章にするための方法や技術について、これからもますます研究を積み重ねていきますよ。

http://life-history.jp/