常々、「老年期こそEQを高めることが大切だ」と思っています。
IQ(知能指数)のことを知っている人は多いのですが、EQについて知る人はどれほどいるでしょうか?
EQとは、Emotional Intelligence Quotientの略称で、日本語では「心の知能指数」と訳されています。
これは、1990年に米国の心理学者ピーター・サロベイとジョン・メイヤーによって提唱された理論であり、1995年に同じアメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンが著した「EQ(心の知能指数)」がベストセラーとなりましたね。
EQとは、すなわち、
①自分を知る
②自分の感情をコントロールする
③他者に共感する
④円滑な人間関係を保つ
ことであり、周りの人々との良き関係を築き、所属する組織や企業を発展させ、末永く充実した人生を送るためには、このEQを高める必要があるとしています。
つまり、EQとは仕事への取り組み姿勢や人間関係への関心の度合いなどを「感情」という視点から評価するものなのですね。
ゴールマンは、心理学と脳科学の観点からEQについて研究しています。特に、1990年代になって飛躍的に進歩した脳の画像技術によって、解明されてきたEQ向上の効果について論じています。
私は、〔ライフヒストリー良知〕事業を推進する上で、「高齢者の記憶」のことをいろいろ調べていくうちに、このEQに辿りつきました。
EQに関連する数々の書物を読み進めながら、老齢の人々の感情や行動様式を観ていくと、冒頭の「老年期こそEQを高めることが大切だ」という思いに至ります。
年齢を重ねていくと、認知の衰えによって自分が何者であるかわからなくなったり、感情をコントロールすることができなくなります。
また他人に対する思いやりや優しさ、より良き人間関係を維持することが難しくなっていくのを目の当たりにしているからです。
しかし、逆を言えば、EQを高めることによって〈認知力の低下〉や〈脳機能の劣化〉などを防止することができるのです。
EQは、遺伝的な要素はもちろんありますが、生活環境を改善させたり、学習や訓練によって、脳の状態を向上させることが可能であると近年の研究で明らかになっています。
時間をかけてでも、感情を司る大脳辺縁系の扁桃体や、理性や判断に関わる前頭葉など、あらゆる脳内の部位に良き刺激を与え、鍛えていく。
顧客である高齢者が、感情を昂ぶらせ、果敢に行動した若き時代を振り返ることにより、自伝的な記憶を再生させ、懐かしさに心を震わすことは、まさにEQを高めていくことに他ならない。
そのことを、私たちのミッションの一つにしているのです。