希望の新年を迎え、今年もよろしくお願いします。

今年最初の話題は、やはり僕がもっとも好きな自伝、勝海舟の父勝小吉が書いた〈夢酔独言〉の話から始めますね。

小吉の自伝を読むと、そこに小吉の赤裸々な姿をあからさまに書き綴っていることがよくわかります。自分の生き様を自慢するような話はほとんど見当たらない。

自伝に関する僕のこれまでの経験では、自伝や自分史を読んで、いちばん読み手に共感されるのは、その人の人生の失敗談ですね。成功よりは失敗、自分が味わった不幸、それからどうやって立ち直ったかという話の数々。

自分の突き放してそのことを語ったり書いたりする。自分を責めるような深い反省の言葉で書き綴ると、そのことを嘲ったり、笑ったりする人なんてまずいません。

自分が成功してみんなから褒められたとか、たいそう立派なことをして満足だということばかり書き過ぎると、人はしらけてしまうことが多い。自伝を家族や友人に見せたり、子孫や末裔に読ませたいと思う気持ちが強ければ強いとそういった傾向に陥りやすいところがあります。

そうではなく、長い人生行路の中で、特別な体験とか普通ではない経験、例えば戦争体験であるとか震災に遭ったとか、或いは交通事故に遭遇したり、倒産の憂き目にあったり、大きな病気に患ったことなど。これは鮮明に記憶に残っているでしょうから、そこをなるべく具体的に書くことだろうと思います。

嬉しい、悲しい、辛いといった感情的な言葉だけでなく、どういう内容の嬉しさ、悲しさ、辛さであったのかを細かく詳しく書いていくことがとても大事ですね。この時、聞き手であるライフヒストリアンの共感しながら傾聴する力が問われます。それがなければ口述自伝は、まったく形を成すことなんてできないのです。

昨年末に、昭和元年(1926年)から、平成31年(2019年)までの詳細な年表が出来上がりました。

https://life-history.jp/nenpyou/ 

口述自伝制作〈ライフヒストリー良知〉のホームページの年表サイトにすべて掲載してありますが、基本的にパスワードで制御しています。しかし、このうち昭和20年(1945年)、昭和45年(1970年)、昭和63年(1988年)はパスワードを入れないでそのまま見ることができます。ぜひご覧ください。

今年は、これらの年表に加え、聞き書き技術のプログラム、口述自伝政策のノウハウなどを提供しながら、ライフヒストリアン(聞き書きによる口述自伝制作者)の育成に尽力していく所存です。

重ねて、今年もよろしくお願いします。