〈ライフヒストリー良知〉のコンセプトは、「顧客の高尚なる生涯やライフヒストリーをどう後世に伝承するか」です。その中で名を挙げ成功した歴史だけでなく、挫折し失敗した歴史も真正面から織り込んでいくことが大切だと思っています。

自ら執筆する〈自分史〉〈自叙伝〉となるとどうしても〈自慢史〉とか〈自分だけの歴史〉になりがちです。

〈失敗学〉という学問があります。この〈失敗学〉で有名な東京大学の畑村洋太郎教授によると、失敗情報の特性を①減衰する、②単純化する、③歪曲化される、④神話化する、⑤ローカル化する、⑥組織内を上下する、⑦蓄積されない、⑧伝承されにくいものとして知るべきだと言います。

この中で特に⑦⑧について、「失敗情報は組織的にも個人的にも蓄積されない。例え蓄積されたとしても、その情報にスムーズにアクセスし、利用できる例は稀であり徐々に消され、外部に伝わることがない場合が多い」と述べています。

また教授は、「失敗から何かを学ぼうとするとき、いちばん重要なのは、第三者による客観的な分析でなく、当事者の生々しい情報である」と喝破し、「失敗に直面したとき、当事者が何を考え、どんな心理状態だったのか、またそのとき、具体的にどういう行動をとったかという情報だ」と論じています。

私たちもそのことをたいへん重視しています。失敗した内容、原因、経緯、対処方法、反省点などを聞き取り、それを知識化し文章に著すことで失敗の伝承が可能になります。

子孫たちにとっておそらくこれほど役に立つ情報はないでしょう。そして「先祖が遺した失敗情報はたいへん有難いもの」という考え方とか雰囲気が後世の人たちのなかに生まれていくならば、自伝を遺す価値は倍増すると思いますね。