〔紀伝体〕とは、中国の歴史書の一つのスタイルのことを指し、〔本紀〕・〔列伝〕・〔表〕・〔志〕で構成されています。

これを生み出したのが、あの歴史書《史記》を著した中国前漢の歴史家・司馬遷ですね。

〔本紀〕とは帝王の事績を記した年代記のことであり、〔列伝〕はその時代に生きた主要人物の伝記、〔表〕とは{年表}を言い表し、〔志〕は諸制度のことを示しています。

この〔紀伝体〕に対して、もう一つの歴史書編纂のスタイルが〔編年体〕と言い、出来事の生起した順に記述していくものです。

〔編年体〕は、事柄が時間の順序に現れるので、時間を追った出来事の推移は追いやすい。

けれども、対象となる人物の行動や体験、それにまつわる出来事の過程が必ずしも連続して現れるわけではない。従って、それをしっかり見届けるにはたいへん不便なのです。

それに対して〔紀伝体〕は、その人物の人生の物語や歴史をまとめて見ることができますね。

しかし、時間に沿った出来事や他の人との関わりが捉えにくいというデメリットがあり、このとき、〔表〕を置いて、この矛盾を少しでも解決できるような仕掛けが施してあります。

これらは、歴史をきちんと描き出そうとした、司馬遷の工夫や執念というものを伺い知ることができます。

私たち〔ライフヒストリー良知〕の口述自伝スタイルは、まさにこの〔紀伝体〕のスタイルであり、〔本紀〕と〔志〕を除き、〔列伝〕を〔顧客の自伝〕とし、〔表〕を〔顧客の年表〕としているのです。

これこそ、日本の自伝制作の新しいスタイルと言ってもいいと思いますね。