人間にとって、もっとも自然な情報の伝達方式は、「音」ですね。動物の進化の過程において、音声こそがいちばん効率的なコミュニケーションの手段だった。自分の脳にある思考を自分の手を使い文章化するよりも、自分の口で話をして他の者に筆記させるほうが楽ですから。

カエサルは部下に馬上で『ガリア戦記』を口述筆記させたし、ドストエフスキーは、妻に口述筆記させて小説を書いた。また滝沢馬琴の作品は、晩年長男の嫁に口述筆記させていたし、福沢諭吉もまた、自ら経営する新聞社の記者に口述筆記させあの有名な「福翁自伝」が生まれた。

ところで、これまでコンピューターは人間の言葉が理解できなかったため、紙とペン、あるいはキーボード入力という方法に頼らざるを得なかった。文字と音声とは融合することができなかったのです。

その状況が今、大きく変わろうとしています。人間がもっとも自然な方法で機械に入力できるようになったという意味で、AI(人工知能)の音声入力や音声認識というのは極めて画期的は技術ですね。おそらくこのAIはこれからどんどん進化を続け、私たちが展開する口述自伝の制作が一層簡便になり、大幅に納期が短縮され、劇的なコストの削減に寄与していくでしょう。