口述自伝制作〈ライフヒストリー良知〉事業を展開するなかで、これまで数多くの顧客にインタビューしてきて、つくづくインタビューとは〈共感して傾聴する力〉と共に、いかに顧客に〈いい質問を仕向けるか〉、いわば〈質問力〉の大切さを感じています。

〈いい質問〉とは何だろうか? 常に考えさせられます。

まず、「絶対にやってはならないのが自分を主張すること」です。自分の主張を押し付けても、顧客の思い出やその時の考えを引き出すことはできません。

顧客と聴き手はまったく別の存在なので、例えば、顧客が〈太鼓〉なら、私たちライフヒストリアンはその〈太鼓〉を叩いていい音色を出させる〈〉でならなければいけませんね。

二つ目は、いかに〈顧客の人生の物語を的確に聴く〉か。成功したこと、楽しかったこと、うれしかったこと、意気に感じたことなどがある反面、失敗したこと、苦しかったこと、辛かったこと、悲しかったことなど、顧客にはいろんな人生体験やストーリーがあります。

「あなたの場合、どのようにされましたか?」、「その時、どう思い、感じられましたか?」、「どのようにしてこの困難を克服されましたか?」。その時々の顧客の心の状態を思い浮かべながら、共感して正しく的確に聴く姿勢がとても大切ですね。

三つ目は、〈顧客自身の本心に気付かせること〉です。自分の感情を冷静に観察して、「今自分の心の状態はこうだ」とか「こんな感情を持っている」といった、いわば〈気づく力〉のことを〈メタ認知〉と言いますが、ひとりではなかなか自分の感情を〈メタ認知〉することは難しいけれど、〈いい質問〉によってこの〈気づく力を強めていく〉ことができますね。

いい質問〉の四つ目が、〈顧客の今を質問すること〉です。過去を振り返ることで記憶に刻まれているいろんな思い出が蘇ってきます。大事なのはそれを今現在、顧客がどう感じ考えているかです。「今、あなたにとってその出来事がどんな意味があったのですか?」とか「それがあなたの今や将来の姿を作りだす要因になっているのでしょうね?」といった質問をしていくのです。

質問力〉とは、私たちライフヒストリアンにとって、〈傾聴力〉と共に、常日頃からしっかりと磨き上げていかなければならないもっとも大切な能力なのです。