《ライフヒストリー良知》の〔良知〕について、少しお話します。

儒教の祖、孔子からおおよそ100年を経た後に生まれた孟子。孟子といえば〔性善説〕で有名なので知っている人も多いと思います。

この孟子が説いたのが〔良能良知〕。これは「人が生まれながらにもっている是非や善悪を誤らない正しい知恵、判断能力のこと」を意味していますね。

人は、誰しも〔良能良知〕を持って生まれてきた。これが〔性善説〕の元となる理論ですね。

時代は下って、中国・明の時代に活躍した王陽明。彼は孟子の〈良能良知〉をもとに〔良知心学〕という学問を確立し、〔陽明学の始祖〕になりました。

王陽明は、「良知は、もはや単なる知覚とか判断能力ではなく,人格的な主体を意味する」と論じています。

〔人格的な主体〕とは、「自分で判断し、行動し、それに対して責任をとる」ことです。王陽明は「人間には本来、そんな〔良知〕が備わっているのだ」と喝破していますね。

さらに、滋賀県高島市安曇川出身で近江聖人と称された〔日本陽明学の祖〕中江藤樹は、〔至良知〕を説きます。

すなわち「人は元来、道徳的に正しく判断し、決断する力を持っている。躊躇するな、良知を発揮せよ」と、単なる机上の論ではなく、行動力の重要性を強く主張しました。

そして、幕末から明治維新にかけて、吉田松陰や西郷隆盛をはじめ、数多くの志士たちに多大な思想的影響を与えたのです。

人が生まれながらにもっている、是非や善悪や誤らない正しい知恵や判断能力である〔良知〕。

私たちは、この〔良知〕をいつまでも大切にし、躊躇せず、ますます〔良知〕を発揮していこうと思っていますよ。

ー続くー