口述自伝を制作するために、顧客から過去に経験した話をいろいろ耳を傾けた後、顧客は「なんか気持ちがスッキリした」「モヤモヤとしたものが吐き出せた」という言葉をよく発せられます。
これが〔カタルシス効果〕ですね。
〔カタルシス〕とは、心の中に溜まっていた不安や不快感、いらいらなどを解放させることで、気分がすっきりする現象のことを指します。
語源となったのは、ギリシア語で〔浄化〕を意味する言葉で、〔カタルシス効果〕のことを〔心の浄化作用〕と表現する場合もありますね。
私たちライフヒストリアンは、この〔カタルシス〕をたいへん重視しています。
ネガティブな感情は、心の中だけに抑え込もうとすると、かえって強いストレスを感じてしまいます。
マイナスの感情を口にするだけでも、そんなストレスが緩和されて気持ちが軽くなることがあります。
映画を見て思い切り泣いたりすることもそうだし、カウンセリングで、カウンセラーからアドバイスを受けるよりも、話を聞いてもらうことで〔カタルシス〕が生まれてきますね。
心理学の世界では、負の感情を溜め込むと、正常な感情や真の欲求が抑圧されてしまい、心身に影響を及ぼしてしまうと言われています。
本人も気づかないでいる感情を開放させることで、コンプレックスの解消にもつながるのです。
また、QOLとは、〔生活の質〕という意味ですが、QOLを決める要素は、「良好な人間関係」「心身の健康」「やりがいのある仕事」などで、
この時、心の中に溜まっていたネガティブな感情を浄化させることで心身を健康にできれば、QOLが向上していくと言われ、様々な分野で〔カタルシス〕について研究がなされています。
口述で自伝を制作する最大の目的が、顧客の〔カタルシス効果〕を導き出すことにあると言っても、言い過ぎではありません。
自伝の最高峰といわれる《福翁自伝》は口述によって作られましたが、福沢諭吉は、自伝を完成させる過程で最大限の〔カタルシス〕を得て、日本の行く末のために仕事に集中し、とても充実した生活を送っていたに違いないですね。
ー続くー