“ライフヒストリー良知”が推進する事業とは、一言で言えば、聞き書きによってその人の「人生の歴史」を綴っていくことです。

では、歴史とは何でしょうか? 一般的には、歴史というと「過去にあった事実」ということになるでしょう。では「過去にあった事実」の正体とは何でしょうか?そんな簡単に説明できるものではないですね。人によって立場や意見が違うので、過去の事実はこうだった、いや、そうではなかったとか、歴史はとかく言い争いになりやすい。

歴史学者の岡田英弘博士は、『歴史とは、人間の住み世界を時間と空間の両方の軸に沿って、それも一個人が直接体験できる範囲を超えた尺度で、把握し、解釈し、理解し、説明し、叙述する営みのこと』『そして歴史の本質は認識で、それも個人の範囲を超えた認識』と言います。

また博士は『歴史は、空間と時間によって認識するが、その時間をどう認識するかは人間の集団ごとで違う。歴史は文化であり、人間の集団によって文化は違うから、集団ごとにそれぞれ「これが歴史だ」というものができ、ほかの集団が「これが歴史だ」と主張するものと違うことも起こりうる。』

『暦を作って時間を管理することや記録を取ることだけでは、歴史が成立するのに十分な条件にはならない。』

『歴史には事件と事件の間には因果関係がある。』

つまり、歴史を成立たせる要素というのは、“直進する時間の概念”、“時間を管理する技術”、“文字で記録する技術”、そして“ものごとの因果関係の思想”ということになるのでしょうか。

個人の人生の歴史〈ライフヒストリー〉に対して、博士のこの考え方を基本に、“ライフヒストリー良知”の事業を進めていきたいですね。