今年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公は渋沢栄一ですね。渋沢は《雨夜譚(あまよがたり)》と題した自伝を著しています。

これは、今から127年前の明治27年(1894年)に編まれたものですが、明治時代中期の国造りに燃える青年たちの求めに応じて、自らの幼児期から大蔵省退官までの経歴を語ったのをまとめた半生記なのです。

当時、渋沢栄一は50代半ばにさしかかろうという年齢でしたが、すでに第一国立銀行をはじめ東京商工会議所を開設し、さらに民間会社を30社ほど創業するするなど、実業家として日本の産業界を指導する立場にいました。

明治元年(1868年)に、ヨーロッパ見聞から帰国して日本で初めて株式会社商法会所を創立した人物であり、まさに〈近代資本主義の父〉なのですね。

渋沢栄一は、終生論語や漢書を手から離さず、儒教の教えを身につけていた反面、西欧の合理主義に打たれ、それを具現化しようとする奥行きを究める人でした。

渋沢栄一の書籍を読み進めていくと、成功する実業家というのがどういうものであるかがわかります。私なりに解釈すると、

①卓越した経営哲学や理念・人生観があること、②自ら生きた社会が自分の能力と完全に一致していること、③実業への協力者、アドバイザー、応援者などの存在があること、④事業として手がけた商品やサービスが顧客に熱狂的に支持されていること、など。

この各要因を四辺とした図形を描くと、渋沢栄一の四角形は見事な正方形になっていきそうです。渋沢栄一には実業家に不可欠な要素が均等に備わっていたのでしょう。

人は誰しもいろんな四角形を持っています。渋沢栄一のような大きく完全な正方形でなくとも、多少短かかったり歪んだりしていても、それはその人にとってとても大切な《人生の四角形》だろうと思っています。