人は生まれながらに、是非や善悪を誤らない美しい心、正しい知恵を持っている。これを〈良知〉と呼びます。〈致良知〉とは〈良知〉を発揮することであり、観念ではなく実際に実行するのが〈知行合一〉ですね。これが陽明学の始祖、王陽明の教えです。

私は、王陽明の思想に共感し、現在展開する口述自伝制作事業の名称を〈ライフヒストリー良知〉と名付けました。

それは、顧客自身のライフヒストリーが真剣なものであったこと、そして〈良知〉を発揮して、その生涯を語り、未来のために書き遺して欲しいという願いがあるからです。

かつて、思想家内村鑑三は、人間が後世に遺すことができる最大のものは何であるかという問いに、「それはその人の勇ましい高尚な生涯」だとし、「これこそが利益ばかりあって害のない遺物である」と断言しています。

キリスト教を信仰者であった内村は、「高尚なる勇ましい生涯とは、世の中は決して悪魔が支配する世の中であらずして神が支配する世の中であることを信じること、失望の世の中にあらずして希望の世の中であることを信じること、悲嘆の世の中でなくして歓喜の世の中であるとという考えを我々の生涯に実行して、その生涯を世の中への贈り物としてこの世を去るということだ」と。

今年もこれまで以上に、良知を発揮し、高尚なる勇ましい生涯を生きた高齢の人々のライフヒストリーを描いていきますよ。